共有不動産に関する物権法改正②(共有物分割と遺産分割との優先関係)
共有物分割と遺産分割との関係について今回はお話しします。
現行民法と改正民法の違いを整理すると次のとおりとなります。
《現行民法》
遺産分割が終わっていない段階では遺産共有とされ、判例上、遺産共有については、共有物分割請求ではなく、遺産分割において共有状態の解消を図ることとされていました。
《改正民法》
改正民法258条の2第1項において、遺産共有については遺産分割によって共有の解消をしなければならないことが明文化されました。
その例外として、同条第2項において「相続開始の時から10年を経過したとき」には、共有物分割請求において共有の解消ができることが新設されました。
ただし、遺産分割の請求があった場合、期限内に共有物分割による処理に異議がある旨の申出がなされれば、従前どおり遺産分割によって共有の解消が図られることとなります。
なお、改正民法258条の2第2項による共有物分割請求の場合、遺産分割についての規定(例えば、配偶者居住権等)は適用されないとされています。
以上のように改正民法において新たに創設される民法258条の2第2項、すなわち、遺産分割が未了の不動産がある場合10年経過したものについて、共有物分割請求がどの程度活用されるか今後の動向に注目しています。
参考条文
《改正民法258条の2》
1 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。
2 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りではない。
3 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第1項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2か月以内に当該裁判所にしなければならない。