共有不動産に関する物権法改正③(所在不明共有者の持分の取得制度)

改正民法で新たに所在等不明共有者の持分の取得が創設されます(改正民法262条の2、改正非訟事件手続法87条)。

そこで、新たに創設される所在等不明共有者の持分取得制度の概略について解説します。

所在等不明共有者の持分取得制度とは、不動産の共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に所在等不明者の持分に相当するお金を供託させた上で、その持分を取得させる裁判ができる制度です。

本来、共有不動産については、共有者の協議により処分行為や管理行為を行います。ところが、共有者の中に所在等が不明の者がいる場合には共有不動産の管理に支障が生じてきます。

現行民法においては、共有関係の解消のためには、①共有物分割請求②共有持分譲渡や放棄がありました。

しかし、所在等が不明の者がいる場合には、現行民法においては裁判による共有物の分割をすることとなります。しかし、裁判による手続には時間を要することなどから、共有関係の解消を容易にするため、新たに所在等不明共有者の持分取得制度が創設されました。

前回、遺産分割と共有物分割の関係でお話した新たに創設される改正民法258条の2第2項との関係から、遺産共有となっている場合には、相続開始の時から10年を経過していないときは、所在等不明共有者の持分取得制度は利用できません。

空き家の管理にあたり、支障となっていた共有状態の解消もこの制度により解決されることが期待されます。

《参考条文》

改正民法262条の2

不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下、この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

2 前項の請求があった持分に係る不動産について第258条第1項による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。

3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、第1項の裁判をすることができない。

4 第1項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払いを請求することができる。

5 前各号の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合に準用する。

Follow me!