共有物を単独使用する者に対する金銭請求の可否

Question

①共有物を一人の共有者(B)(持分2分の1)が単独で使用している場合、他の共有者(A)(持分2分の1)は、単独で使用を続ける共有者(B)に対して、金銭請求をすることができるか。

また、②父親と同居するB(持分2分の1)は、父親の死後も同居していた建物で生活を続けていたところ、Bの兄弟であり相続人であるA(持分2分の1)は、父親の遺産分割未了の間、Bに対して金銭請求をすることができるか。

Answer

【最高裁平成12年4月7日判決】は、共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張、立証のない本件においては、上告人は、右占有により上告人の持分に応じた使用が妨げられているとして、右両名に対して、持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払いを請求することができるのが相当であると解すべきとしています。

したがって、①の場合には、Aは、Bに対して、持分割合に応じて、当該土地の地代相当額の2分の1に相当する額の不当利得返還請求又は損害賠償請求をすることができる。

他方、【最高裁平成8年12月17日判決】は、共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居していたときは、特段の事情がない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借関係が存続することになるというべきであるとしている。

したがって、②の場合には、Aは、Bに対して、金銭請求をすることはできない。

以上のように、共有物を単独で使用している者に対しては、その他の共有者は、各自の持分の割合で受益する権利が害されていることから金銭請求は許容されるのが原則となる。しかし、相続開始前(遺産共有前)から使用占有状況がある場合については、遺産分割が完了するまでの間使用貸借関係があるものとして、金銭請求が否定されています。

なお、内縁関係の場合についても使用貸借関係があったものと推認したものとして、【最高裁平成10年2月26日判決】があります。相続法改正によって配偶者居住権が認められるようになっています。

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